タル日記その5 ヘクトアイズ団危機一髪
冒険の準備を終え、オイラ達はLSの溜まり場になっている上層の限定酒場・マーブルブリッジに向かった。
酒場には忍者・狩人らLSの主力十数人がすでに集まっていて、異様に盛り上がっていた。
こいつらはLSイベントで姫と一緒に出かける時はいつも盛り上がるんだけど、今はそれとはまた違う熱気に包まれている。
原因は最終限界クエスト「星の輝きを手に」にある。今回はスキル上げ・カギ取りに加え、証取りも兼ねているんだ。
先日、猫モがジュノに集う冒険者として初めてマートを破るという快挙を達成して以来、限界5突破に挑む冒険者が次々と現れ、ジュノは今ちょっとした限界5挑戦祭りのようになっていた。
猫モに続けとばかりにうちのLSでも証の需要が高まっていて、赤魔子・黒樽、そして忍者ら十数名が挑戦準備を進めている。
もともとレベル上げに関しては、うちのLSは熱心じゃなかった。
姫とレベリングPTを組みたいが為に、皆メインジョブを姫のレベルに合わせていたからだ。
忍者にいたっては、わざわざレベル下げを行っていたという凄まじさなんだけど、最近ではLSの主力連中は姫と同レベル帯のジョブをいくつも育てていて、メインのレベルを抑えなくてもよくなっているようだ。
そういうわけで、LS・Hecteyesはこれまでに無くレベリングが盛んになり、レベル70に達するメンバーが次々と現れている。
オイラも偉大な獣使いの証を手に入れたから、近々マートに挑戦するつもりだ。
さて、冒険に行く前に今日は大事なイベントがあるんだ。
猫モがマート撲殺一番乗りを果たした記念に、皆で猫モへのプレゼントを買ったんだ。
プレゼントは、羅刹装備のHQ品一式とフェーミナサブリガだ。
猫モは軽装を好むんだけれど、脚装備が今だにミスラロインクロスで防御力が薄いのが皆の心配のタネだった。
オイラも何度も防御の高い脚装備に穿き換えるよう猫モに言いきかせてきたんだけど、「純白パンツじゃないとイヤにゃ」と猫モは首を縦に振らなかった。
一度無理やりズボンを穿かせて戦わせたら、ヒゲを切られたネコのように萎縮してモノの役に立たなかった。
それ以来、猫モにミスラロインクロス以外を穿かせるのを断念していたんだけど、最近タブナジアのショップでフェーミナサブリガという白パンツっぽい装備が売り出されているのを見つけて、これなら猫モも穿くに違いないと皆でお金を出しあって買ったんだ。
羅刹装備の脚以外のHQ品一式とフェーミナサブリガ。
これらはいずれもかなりの高額装備なんだけど、うちのLSは妙にギルを貯め込んでいるヤツが多いので金はあっさりと集まった。
貢ぎたくて仕方が無い連中なのに姫が高額な贈り物を受け取らないので、フラストレーションが溜まっていたみたいだな。
「猫モにプレゼント」と聞いて皆ここぞとばかりに喜んで金を差し出してきたので、フェーミナサブリガが数ダース買えるギルが集まって返金するのが大変なくらいだった。
もし姫が「プルゴノルゴ島が欲しいな♪」なんて言ったら買えるだけの資金を提供しそうだな、こいつら。
皆でクラッカーを鳴らしながら「限界突破おめでとう!」とプレゼントを渡したら、猫モは飛び上がって喜んでくれた。
喜びすぎて、壺をかぶって気孔弾を乱射したのでLSメンが数名戦闘不能になった。まぁいつもの事だから気にしないでおこう。
プレゼントの包装を開いて、中を確認した猫モがまた飛び上がって喜んだ。特にフェーミナサブリガを気に入ったようだ。
狂喜して、姫の乳を揉みまくる猫モ。姫が身悶えて、LSメンは大興奮だ。まぁいつもの事だから気にしないでおこう。
問題はここからだった。
なんと猫モのヤツ、この場で着替え始めやがった!
パンツから脱ぐあたりがさすが猫モといったところだけど、道着の胸元から乳も丸見えだった。
慌てて止めたけど、LSメンは皆前かがみになっていた。
突発的なエロイベントに皆歓声を上げるでもなく沈黙したまま興奮を押し殺している。
その静けさがLSメンの興奮度の深刻さを物語っていて、酒場は異様な熱気に包まれていた。
忍者が「ちょっとトイレ行って来るw」とか言うのを皆が押しとどめたり、狩人が鼻血が止まらなくなったりと、しばらくLSメンの混乱が続いた。
結局、べドーへ向けて出発する頃になっても、LSメンは前かがみのままだった。
前かがみの十数名の男達がゾロゾロと歩く姿は異様な光景だ。
大丈夫かなぁ、こんな事で。
今日はついていないという占いの運勢を思い出し、少し不安を抱きながらオイラ達はべドーへと向かった。
つづく(次回:尻煙るべドー)