その1:「はやくモミモミにゃ!」(全10回)


起床。ベッド代わりのメロディアに礼を言って帰し、洗顔歯磨き。
いつもならジョギングに出るんだけど、今朝はちょっと予定が違う。
猫モが忍者のジョブ取得クエストをクリアしたいと言うので、一緒に朝早くから出かけなきゃいけないんだ。

本来なら猫モ一人で簡単にクリアできるクエストだけど、今は猫モが発情期になっていて危なっかしいので、オイラもついて行くことにしたんだ。
猫モが急に忍者を取得したいと言い出したのは、どうやら忍者のマンガを読んだかららしい。
ほっぺにグルグルとかそういうマンガだそうだ。

ちなみに姫は昨夜から実家の方へ帰っている。
発情期の猫モと同居すると姫はめちゃくちゃにされてしまって身がもたないので避難してもらっているわけだ。
たいてい猫モは発情しても1日くらいで元に戻るので、今日を何事も無くやりすごせれば大丈夫だ。
猫モがトラブルを起こさないようオイラが気をつけてやらなきゃ。

オイラは猫モを起こそうと猫モが一人で休んでいるはずの寝室へと向かった。
が、寝室に猫モの姿がないし!
バ、バカな…!あいつが勝手に外に出ないよう、オイラは玄関で寝てたんだけど…。

調べてみると 、窓から猫モが出て行った形跡があった。
ジュノのレンタルハウスは超高層なので窓から飛び降りたら普通死んじゃうんだけど、どうやら猫モは壷に乗って飛んで行ったらしい。
くそっ!壷も姫と一緒に避難させるべきだった!

オイラは慌てて猫モを追って街へと飛び出した。
あいつ普段は親しい女の子の胸しか触らないんだけど、発情期になったら手当たり次第だからな!
被害者が続出する前に、なんとか捕まえないと…!

すると、朝っぱらから内藤さんと出くわしてしまった!

「タル君ジョギングかい?wwwwwwwwwwwどっちが速いか勝負しようwwwwwwwwwww」
そんなことを言って内藤さんは両手剣を振り回しながら、とんずらでオイラを追い抜いて行った。
そして案の定、振り回した剣がジュノ親衛隊員に当たったらしく、すごい数の隊員を引き連れて内藤さんが駆け戻ってきた。
なんだか朝の風物詩みたいな光景になってるなぁ。
「ボスケテwwwwwwwwwww」
って聞こえた気がするけれど、関わらないでおこう。

レーダーで探知すると猫モの居場所はすぐにわかった。
急いでかけつけると、猫モは上層の路地でヒュームの女の子の胸を触っていた。
気を失って猫モにされるがままになっている女の子の顔を見て、オイラは絶句した。

フェ…フェレーナさん…!?よりによって天晶堂のボスのアルドの妹さんかよ!
フェレーナさんはアルドからずいぶんと大事にされていて、天晶堂の戦闘員達からも慕われているようだし…こ、これはまずい…!やばすぎる!
天晶堂に刺客を放たれて人知れず海に沈められるという最悪の事態が頭をよぎり、オイラはガクブルした。

フェレーナさんは気を失ってるみたいで、猫モの好き放題にされていた。
すぐにでも助けてあげたいところだけど、胸を触っている時の猫モは見破り持ちのアクティブ状態だ。
獲物(胸)を取られまいとする狩猟本能が全開になるらしく、とくに
発情期で気がたっている時は手がつけられない。
このあいだ猫モが暴れた時なんて壷をかぶって気孔弾を乱射したもんだからジュノの時計台が倒壊しかかっちゃったくらいだ。

と、とりあえず今は猫モの隙をうかがうしかない。
ごめんよフェレーナさん…。

猫モ
「んちゅ…ペロペロ…ちゅちゅ…」

猫モはものすごく幸せそうな顔でフェレーナさんの胸を舐めたり吸ったりしている。まったく、人の気も知らないで…。
それにしてもフェレーナさんの胸は大きいなぁ。
姫やナイマが人気があるのを見ると、ヒューム族やエルヴァーン族の男は胸が大きい女の人が好きみたいだな。
かと思えばエル先生のように小さい胸が大好きな人もいるし、よくわからないなぁ。

猫モ
「ゴロゴロゴロ…」

やがて猫モがノドを鳴らしはじめた。
顔は緩みきってだらしなくヨダレを垂らしていて、完全に隙だらけだ。今だ!

タル
「あらよっと!」

猫モ
「ぎにゃ!」

オイラが斧の柄で猫モに不意打ちを喰らわせた。
頭に巨大なたんこぶができて、猫モは気を失った。
まったく世話をやかせるぜ…。

オイラはフェレーナさんの着衣を整え、路地の隅に寝かせた。
猫モのせいで女の子の着衣を整える手際が良くなってしまった。こんなスキル上げたくないんだけど…。

ふと路地の傍らを見ると、花壇に芽が生えていた。
フィックの植えた種か。フェレーナさん、これに水をあげに来たんだな。
栽培のやり方がまずいみたいで、芽はしおれ気味だった。このままじゃダメだ。
ちょうどベンの餌の高級腐葉土を持っていたので 芽のまわりの土をそれと入れ替えてクリスタルを挿してやった。
芽がみるみると生気を取り戻したのがわかった。これで大丈夫なはずだ。

「ん…。あら…?」

オイラが花壇の世話をしていると、フェレーナさんが目を覚ました。
オイラはもうとにかくフェレーナさんに頭を下げて、猫モの所業を謝った。

フェレーナさんは猫モに何をされたか思い出して顔を真っ赤にしていたけど、
猫モに悪気がないのを察してくれたみたいで許してくれた。
あぁよかった…!アルドは妹のことになると見境がないってもっぱらの噂だからなぁ。
これでバストア海のもくずにならなくてすんだよ…!

なんかフェレーナさんて聖女っぽいお嬢さまで、姫と少し似てる感じがするなぁ。
こっちはすごく迷惑をかけたのに、花壇の世話をしたオイラにフェレーナさんは頭を下げて礼を言ってくれて恐縮しちゃった。
オイラはフェレーナさんに何度もお辞儀して、フィックの芽が花を咲かすよう祈りながら路地を後にした。

気絶した猫モを壷に乗せて運びながらレンタルハウスへ向かっていると、内藤さんがまだ親衛隊員達と派手な斬り合いを演じていた。
親衛隊一個小隊相手にソロで張り合えるなんて、内藤さんも大したもんだなぁなんて感心してしまった。
「ボスケテwwwwwwwwww」
って聞こえた気がするけれど、関わらないでおこう。

さて、軽く食事をとってから、忍者のジョブ取得に出発だ!


つづく (NEXT:おっぱい温泉へ行こう